一般泌尿器科の主な疾患
一般泌尿器科における代表的な疾患は、排尿障害(前立腺肥大症、過活動膀胱、尿失禁)、血尿(尿潜血、肉眼的血尿)、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)、性感染症、 尿路結石症(腎結石、尿管結石、膀胱結石)、性感染症、泌尿器科がん(前立腺がん、膀胱がん、腎がん、精巣がん)などがあります。
排尿障害
排尿障害は、膀胱や尿道などのトラブルによって排尿行為が正常に行われていない状態です。
この場合、頻尿、尿漏れ、尿意切迫感、夜間頻尿、尿勢低下、残尿感、排尿後尿滴下などの症状が出現し、患者様の生活の質(QOL)を低下させてしまいます。
前立腺肥大症、過活動膀胱、膀胱炎などの病気が潜んでいることも多いため、当院では尿検査、超音波(エコー)検査、尿流量検査(尿の勢いなどを調べます)など行いながら原因を調べていきます。
血尿
赤い尿がでた状態を肉眼的血尿といいます。
腎臓、尿管、膀胱、前立腺、尿道などの尿路において、何らかの異常が起きており重要な病気のサインとなります。
原因として、排尿痛や疼痛などある際は尿路感染症や尿路結石の可能性があります。
症状のない肉眼的血尿は膀胱がんなどの悪性腫瘍の可能性がありますので必ず診察を受けてください。
一方、目でみて尿の色の変化はわからないものの、尿検査にて血が混じっている状態を顕微鏡的血尿(尿潜血)といいます。
顕微鏡的血尿でも、必ずしもすぐに治療等が必要でない場合も多数ありますが、がんなどの重要な病気の危険信号の場合がありますので、精査をされたことのない場合は一度受診をおすすめします。
当院では血尿がみられた場合、超音波(エコー)検査、尿細胞診(がん細胞の有無を調べます)、さらに必要と判断しましたら、膀胱鏡検査等を行って早期発見に努めます。
尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)
尿路感染症は、尿路に細菌が棲みついて増殖し、炎症を起こしている状態です。
感染部位によって「膀胱炎」、「腎盂腎炎」などに分類されます。
細菌が尿道から侵入しても、健康な状態であれば膀胱の感染防御機能が働くので自然に治ります。
しかし、膀胱内で細菌が増殖すると膀胱炎を起こします。
細菌がさらに尿管を上って腎盂に達し、そこで増殖すると腎盂腎炎になります。
大腸菌などの細菌感染によって発症し、腎臓の痛み、38℃以上の発熱、吐き気などの症状がみられます。
治療は、主に抗菌薬を使用します。
なお、服用してからしばらくすると発熱や痛みなどの症状が治まりますが、その段階で服薬をやめてはいけません。症状が良くなっても細菌が残っていることがありますので、医師の指示を守るようにしてください。
性感染症(STD)
泌尿器科で多いものとしては、淋菌感染症とクラミジア感染症があります。
淋菌感染症
淋菌感染は感染から2~7日程度の潜伏期間を経て発症します。
主な症状ですが、男性の場合、激しい排尿痛や尿道から黄白色様の膿が排出されるなどがあります。
女性の場合は無症状か軽い症状です。主に排尿痛やおりもの増加、排尿痛、尿道から膿が排出されるといったものです。
淋菌を放置して進行すると、男性では精巣のとなりにある精巣上体に炎症きたす精巣上体炎を発症します。
女性の場合は卵管炎や卵巣炎を発症する可能性があります。不妊症の原因となることがあります。
治療方法は、抗菌薬となります。
飲み薬・点滴・筋肉注射があり、症状などに合わせて医師が判断して治療します。
また診断された場合は、パートナーの検査もすすめられます。
クラミジア感染症
クラミジア感染症については、男性の場合は排尿痛や尿道掻痒感、尿道から膿がでるなどの症状があります。
放置すると精巣のとなりにある精巣上体に炎症きたす精巣上体炎を引き起こします。
女性では症状が軽く、無症状なこともあります。
放置しますと卵管炎・卵巣炎・骨盤腹膜炎(お腹の中の炎症)などに進行したりします。放置すると不妊症の原因になることもあります。
治療法は、抗菌薬の内服治療になります。また診断された場合はパートナーの検査もすすめられます。
その他の性感染症
その他の性感染症として、主に尿道や膣の部位に症状をきたすカンジダ、膣トリコモナス、マイコプラズマ・ジェニタリウム、ウレアプラズマ・ウレアリチカムなどや、主に皮膚症状をきたす梅毒、ヘルペス、尖圭コンジロームなど、全身の不調をきたすHIV、B型肝炎、C型肝炎などがあります。
症状で気になる方は受診をお勧めします。
尿路結石
腎臓や尿管、膀胱などに結石が発生してしまう病気です。
結石が尿管から排出されると膀胱や尿道へ達し、膀胱結石や尿道結石を起こすこともあります。
主な症状は、激しい痛みです。
この激痛は、腰や背中から側腹部にかけて疝痛発作(数分~数時間ごとに周期的に反復する激痛)として現れます。
治療につきましては、結石の大きさや部位を考慮して決定します。結石が小さく、自然排出が期待できるときは、主に保存的治療を行います。
お薬を服用したり、水分を多く摂取したりして結石を排出させやすくします。
結石の排石がない場合やサイズが大きいときは、体外から結石に向けて衝撃波を与えて破壊する体外衝撃波結石破砕術や、尿道より内視鏡を通して結石を砕くという経尿道的尿管結石破砕術などの手術治療が必要となりますので、連携病院にご紹介させていただきます。
泌尿器科がん(前立腺がん、膀胱がん、腎がん、精巣がん)
泌尿器科で治療が行われるのは、前立腺がん、膀胱がん、腎がん、精巣がんなどですが、早期発見・早期治療が重要になります。
当院ではできるだけ早期発見できるよう努めます。
がんの進行度によっては高度な治療が受けられる連携病院をご紹介します。
前立腺がん
前立腺がんは男性のみにある臓器である前立腺にがん細胞が発生した状態です。
50歳以上の男性に多く見られます。
ほとんどの初期の前立腺がんは自覚症状がありません。
前立腺がんの検査は、血液検査による前立腺の特異マーカーであるPSA (前立腺特異抗原:prostate specific antigen)を計測することでスクリーニングを行うことができます。
PSAの数値が高い方は、前立腺がんの可能性があります。
前立腺がんの診断には、前立腺に針を刺して組織を採取する前立腺針生検が必要です。
これは採取した組織にがん細胞の有無を確認し、さらに癌の顔つき(悪性度)、広がり(病期)を知り、その後の治療をより正しく行うために必要な検査です。
当クリニックでは日帰りの前立腺生検を行っています
当院では経会陰アプローチで日帰り前立腺生検を行っています。
会陰からの穿刺では痛みがあるため、低用量の腰椎麻酔にて行います。
局所麻酔と違って、ほとんど痛みはなく日帰りで検査を行えます。
しかし腰椎麻酔のため、しばらく下肢に力が入らない(立位・歩行困難)ため麻酔の効果が切れるまでクリニック内で休んでからお帰りいただきます(およそ3~4時間程休んでいただきます)。
その後、安全のため(車の運転ができません)、どなたか付き添いの方と一緒にご帰宅していただきます。
お迎えの方がいらっしゃらない場合、局所麻酔での検査となります。
詳しくは、診察時に直接お問い合わせください。
膀胱がん
膀胱がんは膀胱で発生する悪性腫瘍です。
男性が膀胱がんになる割合は女性の約2~3倍といわれています。
最初は症状のない赤い尿(無症候性肉眼的血尿)が多い症状です。
検査は、超音波(エコー)検査、尿細胞診(がん細胞の有無を調べます)、膀胱鏡検査(膀胱内をカメラで直接観察します)を行います。
腎がん
腎がんは、腎臓の細胞が悪性化したものです。
50歳以降の男性に好発しやすいと言われています。
かつては、腎がんの3大症状は血尿・側腹部痛・腹部腫瘤とされていました。しかし、現在においては、多くの患者様は検診のエコーや他の病気の検索中に発見され、無症状のうちに早期発見されます。
腎がんの疑いがある際は、画像検査(CT検査、MRI検査)などの精密検査を行い判断します。
腎がんの治療は早期であれば、一般的に手術治療が第一選択になりますので手術治療が可能な病院をご紹介します。
精巣がん
精巣がんは、精巣に発生する悪性腫瘍です。
検査には超音波(エコー)検査が有用です。
精巣腫瘍には3つの腫瘍マーカー(LDH、AFP、HCG)があり、採血にて測定します。
精巣腫瘍の疑いがあり転移を検索するためにCTやMRI、PET/CTなどの画像診断を行います。
検査で精巣がんの疑いがある際は、診断治療のため連携病院をご紹介します。
男性泌尿器科の主な疾患
男性における代表的な疾患は、前立腺肥大症、前立腺がん、精巣がん、陰嚢水腫、血精液症などがあります。
前立腺肥大症
前立腺肥大症は、膀胱付近の尿道を取り囲む栗の実ほどの腺組織(前立腺)が肥大化する病気です。
前立腺が肥大すると尿道を圧迫して、膀胱から尿道出口への尿の通過が妨げられます。
そのため、「尿が出にくい・尿の勢いが弱い・尿をするのにお腹に力を入れる」などの排尿症状がでます。
さらに頻尿、夜間頻尿、残尿感、尿意切迫感、尿もれなどの蓄尿障害(膀胱内に尿をためる機能障害)も起こします。
加齢とともに発症者が増えてくるのが特徴です。
治療につきましては、まずは薬物療法が中心となります。
前立腺肥大によって狭くなった尿道を広げる薬や、前立腺を縮小させる薬、排尿に関わる筋肉をリラックスさせる薬などが使用されます。
当院では尿検査、超音波(エコー)検査、尿流量検査(尿の勢いなどを調べます)など行い、前立腺の状態や症状に適した薬を選択します。
また薬物療法で効果が不十分な場合や副作用で服用できない場合などは、外科的治療も選択肢となりますので、その際は手術加療のできる病院をご紹介いたします。
陰嚢水腫
陰嚢水腫は、精巣の周囲に液体が溜まるなどして陰嚢が膨らんでしまう病気です。
下腹部の見た目が変化する程度で目立った症状もなく、痛みもほとんど見られないのですが、液体が陰嚢内で増えていくことで精巣が圧迫を受け、不快感が強まることもあります。
超音波(エコー)検査を行うことで診断可能です。
症状を改善するために、陰嚢穿刺(陰嚢に直接針をさして陰嚢内の液体を吸引します)を行ったりしますが、再発を繰り返すことが多く一時的な改善にとどまることが多いです。
根本的な治療としては、手術療法が必要なことが多いです。
血精液症
血精液症とは、精液に血液が混じる病気です。
多くの場合痛みなどの症状は伴いませんが、精液の色が鮮紅色から茶褐色と様々になります。
時に血の塊が混ざることもあります。
検査をしても原因がはっきりしないことが多く、精液自体は、精子と精嚢(せいのう)の分泌液と前立腺の分泌液で出来ているため、前立腺や精嚢に存在する微小な血管からの出血とも考えられます。
頻度は低いですが、前立腺などの腫瘍が原因でおこることがありますので、超音波検査で前立腺や精嚢、膀胱などの状態を調べたり、尿路感染症の有無をみるために検尿を行ったりします。
また中高年以上の方は前立腺がんの有無を調べるためPSAという腫瘍マーカーの採血を行います。
血精液症がきっかけで癌が見つかる確率は高くありませんので過度に心配される必要はありませんが、検査を受けたことがなければ受診をお勧めします。
慢性前立腺炎/骨盤痛症候群
前立腺は、骨盤の一番奥にある器官です。体表からは陰嚢と肛門の間の皮膚の数cm奥のあたりに存在します。
この前立腺に炎症を起こした状態が前立腺炎です。
排尿時痛、高熱等の強い症状が出ることが多い場合は急性細菌性前立腺炎といわれ、細菌感染が原因とされます。
これに対し慢性前立腺炎では、陰茎、陰嚢、鼠径部、下腹部など、さまざまな部位における鈍痛や不快感、頻尿、残尿感、排尿時痛など症状が多くあります。
しばしば不定愁訴として扱われる場合があります。
主に行われる検査ですが、問診(生活習慣や職業など)、尿検査、直腸診、前立腺超音波検査、場合によりPSA(前立腺がんマーカー)採血などを行います。
しかし診断方法は確立されていないため、正確に診断されずに困っている患者様が潜在的に多く存在することが示唆されます。
治療として、まずは生活指導を行います。
症状が悪くなるきっかけがあれば、それを避けるように指導します。
例えば、長時間の運転やデスクワークの禁止、頻回・多量の飲酒の禁止、辛い物の摂取の禁止、ストレス解消などです。
確実な薬物療法はありませんが、細菌性が疑われる際は抗生物質の投与が行われます。
その他、前立腺肥大症に使用される薬剤や、植物性薬剤や、漢方薬などを使用することがあります。
しかし治療法の確立もできていない現状があり病態が不明な点が多く、治療が長期間に及ぶことも多いです。
女性泌尿器科の主な疾患
女性における代表的な疾患は、過活動膀胱、尿失禁、骨盤臓器脱などがあります。
過活動膀胱
膀胱内に尿が十分に溜まっていないのに、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮してしまう病気です。
症状としては、急に尿がしたくなって我慢ができない(尿意切迫感)、尿が間に合わずにもれてしまう(切迫性尿失禁)、トイレに何回も行くよう(頻尿)になります。過活動膀胱は日本で1,000万人以上の男女が罹患する頻度の多い病気です。
原因としては、加齢による老化現象、脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄の病気などでおこりますが、原因が不明なことも少なくありません。
治療としては、抗コリン薬というお薬を服用すれば、かなりの割合で効果が期待されます。
また薬物療法だけでなく、適切な生活指導(水分摂取量や運動療法による生活習慣の改善)、膀胱訓練(排尿間隔を広げていく行動療法)、継続的な骨盤底筋体操を行うことが治療に効果的とされています。
薬物療法は1剤で効果が得られない場合には、2剤以上を併用することもあります。
しかし、便秘や口の乾きや目の乾き、排尿困難、不整脈などの副作用を生じることもありますので、薬が体に合わない場合には薬の中止・変更が必要になります。
治療を受けても効果が得られない場合には、『難治性過活動膀胱』と言われ、薬物治療以外の治療法も適応になります。
2020年4月からは、難治性過活動膀胱に対して『ボトックス治療』が保険収載されています。
尿失禁などの症状緩和に効果的とされています。
この治療を受けることができる方とそうでない方がありますので、詳しくはご相談ください。
尿失禁
尿失禁には様々な症状があり、いくつかに分けられます。
ここでは主に腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁について説明します。
診断には、問診、排尿日誌(1日の排尿量や回数、尿失禁数を記録すること)、尿検査、超音波(エコー)検査、尿流量検査や残尿量測定(排尿の状態や状況を調べます)などを行います。
必要に応じて、内診台での診察、膀胱鏡検査などの詳しい検査を行うこともあります。
腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁とは、重い物を持ち上げた時、せきやくしゃみをした時、走ったり・ジャンプをした時など、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまい生活に支障をきたす病気です。
週1回以上経験している女性は500万人以上といわれ、女性の尿失禁の中で最多とされています。
これは出産や加齢により、骨盤底を支える筋肉などの支持組織が緩むために起こります。
治療については、軽症であれば薬物治療が有効です。
また尿道のまわりにある外尿道括約筋や骨盤底筋群を強くする骨盤底筋訓練で改善が期待できます。
さらに肥満の方や最近急に太った方では、減量が有効なことがあります。
症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
切迫性尿失禁
急に尿がしたくなり(尿意切迫感)、トイレまで我慢できずに漏れてしまうのが切迫性尿失禁です。
女性では膀胱瘤や子宮脱などの骨盤臓器脱も切迫性尿失禁の原因になることがあります。
治療としては、薬物療法がおこなわれます。
また生活指導(飲水コントロール)、骨盤底筋体操、膀胱訓練(尿意があっても少しがまんする)などの行動療法を併用したりします。
尿失禁は生命に直接影響するわけではありません。しかし生活の質を低下させてしまう病気です。
症状でお困りの際は、恥ずかしがったり、年齢によるものと諦めたりせずにご相談下さい。
骨盤臓器脱
女性の骨盤底には子宮や膀胱や直腸などがあり、これらは骨盤内の支持組織で支えられています。
出産や加齢で骨盤を支えている支持組織が緩むと、子宮や膀胱や直腸などの臓器が膣から出てくるようになります。
これらの病気を総称して「骨盤臓器脱」と呼びます。
最初は膣にピンポン玉のようなものを触れることで気付くことが多いです。
徐々に歩行時、排便時などの腹圧が強まったときに、一時的に臓器の脱出が目立つようになります。
さらに重症化すると、常時脱出した状態となります。
脱出した臓器を股にはさんで歩くような状態になったり、擦れて出血したり、おりものが出ることもあります。
また進行すると排尿障害(尿が出しにくい)や排便障害(便秘で困る)の原因にもなり得ます。
主な症状は頻尿、排尿困難、尿漏れ、外陰部の掻痒感、骨盤内臓器の下垂感、異物感、腰痛などです。
特に立ち仕事が多い方、長時間の運動をされる方は注意が必要だと言われています。
症状が軽度の場合は、骨盤底筋体操(肛門をしめる運動)やリングペッサリー(膣内に入れる専用の器具)などにより治療されます。
しかし、重度の場合には手術治療(膣閉鎖術、膣壁形成術、経腟メッシュ手術、仙骨膣固定術など)が必要になります。
その際、当院より手術の可能な病院へご紹介いたします。
小児泌尿器科の主な疾患
小児の代表的な疾患は、夜尿症、停留精巣、包茎などです。
夜尿症
おねしょのことを夜尿症と呼びます。
夜尿症診療ガイドラインでは、「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」と定義されています。
夜尿症の有病率(病気をもっている人の割合)は、5歳:15%、6歳13%、7歳:10%、8歳:7%、10歳:5%、12~14歳:2~3%、15歳以上:1~2%とされています。
夜尿症の原因は、親の育て方や子どもの性格の問題ではありません。
原因として①睡眠中に膀胱がいっぱいになっても尿意で目をさますことができないという覚醒障害や、②睡眠中の膀胱の容量が小さく、ある程度膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮してしまうなどの畜尿障害や、③夜間に尿量が多くなる夜間多尿などがあります。
これら様々な要因が複雑に関与して発生します。
夜尿症の治療には大きく分けて生活指導、行動療法と薬物療法があります。
生活指導
食事内容、飲水量、排尿習慣のコントロール、就寝前のトイレ排尿、夜尿をしていることへの本人の心理的負担を軽減させることも重要です。
行動療法
夜尿アラーム療法、一定時間での覚醒療法、排尿訓練(排尿抑制、排尿中断など)があります。
アラーム療法は濡れたら鳴るアラーム(ブザー)で患者様を夜尿直後に起こす治療で、自分で起きない場合は家族の協力が必要となります。
この治療がなぜ夜尿に有効かはわかっていませんが、多くの場合は朝まで夜尿をせずにもつようになり、睡眠時の膀胱容量が増加すると考えられています。
薬物療法
薬物療法では副作用に十分注意しなければなりません。
代表的なものに、抗利尿ホルモン剤、三環系抗うつ剤、抗コリン剤などがあります。
抗利尿ホルモン剤は、夜間尿量を減少させる効果のある薬剤です。水中毒を防ぐために就眠前2-3時間以内の水分制限が必要となります。
三環系抗うつ剤は、尿意覚醒を促進する作用、抗コリン作用、尿量減少の効果が期待されます。食欲不振、悪心、嘔吐、不眠、眠気などの副作用に注意が必要になります。
抗コリン剤は過活動膀胱が示唆される症例に有効性が期待されています。
生活指導をはじめとする治療介入により、自然経過に比べて治癒率を高め、治癒までの期間が短縮するといわれています。
小学校に入っても夜尿症が治らない場合は、小児科あるいは泌尿器科を受診することをおすすめします。(参考文献:夜尿症診療ガイドライン2021)
停留精巣
男性の精巣は陰嚢の中に収納されていますが、胎児の初期段階では陰嚢内にまで達していません。
母体の中で胎児が成長するにつれて、腹部から徐々に精巣が降りてきます。
停留精巣は、このような過程がうまく働かず、何かしらの原因によって精巣が下降していない状態です。
特に、低出生体重児や早産の場合にみられやすいと言われています。
また停留精巣は通常の陰嚢内精巣に比べて悪性腫瘍(精巣腫瘍)の発生が3~4倍程度高いとされています。
しかし精巣腫瘍自体は発生頻度が極めて低いのであまり神経質になる必要はありません。
手術で陰嚢内に固定されていれば腫瘍の早期発見が容易であり早期治療が可能になります。
停留精巣を放置しておくと精巣自体が固定されていないので精索(栄養する血管や精管)が捻れる精索捻転という状態を起こしやすいとされます。
また外傷を受け易いことなどが挙げられます。
乳幼児は陰嚢が小さく分かりにくい子もいますので、はっきりしない場合はまずご相談ください。
治療が必要な場合は、小児泌尿器科の専門病院をご紹介させていただきます。
包茎(ほうけい)
包茎とは、亀頭部(きとうぶ)が包皮(ほうひ)で被われて亀頭先端が露出していない状態をいいます。
乳幼児期は、包皮の一部が亀頭と引っ付いているのと、包皮の口が生理的に狭くなっており亀頭が見えにくくなっています。
生まれたばかりの男の子はほぼむけない状態が正常です。
いつむけるようになるかは子供によって様々です。
4-5歳になると亀頭が見えるまでむけることも多いです。
陰茎が成人のサイズになった段階で包皮と亀頭の引っ付いているところが解除されると、包皮をむいて亀頭がだせるようになります。
日本人の陰茎形態の変化について、亀頭がほぼ露出する割合は6ヶ月未満では5%未満ですが、3-4歳では約半数にちかづき、11-15歳で7割を超えます。
包茎と関係する症状として、包皮が赤く腫れる亀頭包皮炎(きとうほうひえん)、尿がスムーズにでず包皮がふくらむこと(バルーニング)があります。
また、包皮をむいた後にもどらなくなり、亀頭や包皮がうっ血して強い痛みを伴う場合があります(かんとん包茎)。
これは至急に受診が必要です。
治療としては、子供が成長しても亀頭を露出できない場合やバルーニングのある場合はステロイド軟膏治療や手術治療のいずれかが選択されます。
元に戻せないかんとん包茎、包皮が硬くなり成長してもむけない場合は手術治療が選択されます。(参照:日本小児泌尿器科学会)